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タコアシ

81.TAKOASHI

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カメラの三脚を落としてしまった。
たぶんキト市街で落としたものと思われる。

三脚と言っても、高いものではない。三本足がグネグネ自由に曲がるラバーの三脚だ。
パブロと食事に行った際のこと。
カメラ屋の前で同じ三脚が目に付いた私は、思わず「無くした三脚と一緒だ!」と、
ショーケースに飾られるまでもない、せいぜい800円の三脚を指差した。
「あれは日本ではなんという名前で売られているんだ」
私は、三脚ではないな、なんだろう・・ そうだ、タコアシだ!と言った。

「なに?タコアシ!?」

それからは私のあだ名はタコアシになった。
ことあるごとに私のことを「タコアシー!」と、奇声をあげるクリス。
カバのことをイポポータモというが、これをタコアシの反逆の言葉として決死の攻防を繰り広げたのである。

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タコアシー!
イポポータモー!

くだらない奇声の張り合い
毎日

引きこもりだった私を新聞記者のパブロがバイクで連れ出してくれた。
その手には三脚タコアシ、パブロがカメラ屋で買ってきてくれていた。
この人たちはどこまで親切なんだ。ありがたくタコアシを受け取る。
「バモス、タコアシ」
外出から戻ってくると、探しても出てこなかったタコアシがベットの上にのっていた。
「床におちてたぞ」とクリス。
タコアシがふたつになった。


翌日、クリスが「今日は引きこもり決定」としていた私の部屋にやってきて、
「タコアシ、外で遊んで来い」と、市街バス乗り場まで歩いて送ってくれた。
仕方が無いので遊びに行った。
南米は治安が気になって外出に気をつかう。
外出というだけで疲れるのである。

仕方なくバスに乗って出かけた。
市街地で迷子の日本人に出会い、行動を共にしているうちに夜になった。
この頃にはクリスたちのおかげでスペイン語もすこしは上達していた。
日本人旅行者の彼はキトのスペイン語学校に入学するために訪れているという。
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ふたつの先っぽの教会に行きたかった私たちは、夜の街に繰り出した。
市街地で現地民に道を尋ねると、
「夜は危険だ。やめておけ」
それを聞いて私たちは早歩きで彼の宿まで戻った。送った先は先日私も泊まっていた日本人宿だった。
中に入ると、あいかわらず旅行者でにぎわっていた。
また会おうといって彼と別れた。
それからもう会うことはなかった。
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クリス家最寄のバス停に着いたのは夜10時だった。ひとりで家まで帰ろうとすると、
奥さんチヨと妹アレクサンドラが心配そうな顔で私を待っていた。笑顔で出迎えてくれた。
クリスの家に到着するなりワインを飲んでご機嫌のクリスが、よくやったじゃないかトラと言った。
たぶん夜のキトはそれだけ勇気のいるところなのだろうと解釈した。

深夜のキトを徘徊したくて再度クリスを誘って市街地へ出かけた。
人気のない深夜の大統領宮殿を歩いていると、前方からひとりの男が歩いてきた。

クリスの「バモス!」の掛け声と共に走って車まで戻った。
若い不良集団もいた。
こちらを気にしては、ちょっかいをだそうとしていたが、日本空手を習得している大男クリスは相手にしなかった。
身長190センチ体重100キロ超の巨体から繰り出される回し蹴りは、きっと素人のそれではないはずだ。
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それにしても、市街地をたった一人で歩いている男さえ警戒しなければいけない。
南米は、やっぱりこわい。

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masatorakun

Author:masatorakun
皆様、こんにちは。
大型バイクのハーレーダビッドソンで世界一周したときの日記を再現しました。
楽しんでいただけると嬉しいです。

*写真転用コピ等禁止予めご了承ください。

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